1 全体動向


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1−1 アジアのインターネット利用者数、大幅増加続く


年間70%の急成長
 1998年から99年にかけて、アジア各国のインターネット市場は順調に成長し、利用者数は大幅な増加を示した。総数では、1580万人から2850万人と1000万人以上も増加し、率にすると80%を越える大幅な伸びをみせた(資料5-3-1)。アジアを襲った経済危機の結果、多くの国で経済成長率がマイナスを記録した影響はまったく見られない。
 総数では日本が断然多く、唯一1000万を大きく越え、オーストラリアが400万、台湾が300万、韓国が200万と続く。世界一位と二位の人口大国の中国とインドでインターネットがようやく普及をみせはじめ、爆発的普及が起ころうとしている。
 この結果、アジア全体でインターネットの利用者が人口の1%を越えたことは注目に値する。人口比で1%を越えたことは、普及に弾みがつく第一段階、いわゆる第一次のクリティカルマスに達したと考えられるからである。このままの勢いが続けば、2002年までに利用者は約1億人、人口の約3%に達するものと予測される。
 インターネット市場の起源を、いくつかの国で商用化が始まった1992年を起点と想定すれば、1%に達するのに6年、3%に達するのにはさらに3年かかったことになる。普及にさらに弾みがつく10%の水準に達するのに、果たしてあとどの位の時間がかかるだろうか。現在の勢いが続けば、2004年には人口総数が概算で30億、利用者総数で3億人に達すると考えられる。

 日本を除くアジア太平洋諸国の利用者数がはじめて過半数に達したことも注目に値する。アジア地域でのインターネット市場の成長の潜在的な可能性は、母数となる総人口が大きいだけに、巨大なものがあり、今後、経済の回復につれてその世界市場全体における重要性はきわめて大きくなることは間違いない。



1−2 人口比20%を越えたオーストラリア、シンガポール、台湾


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 国別でのインターネット利用者の人口に対する普及率では、オーストラリアが20%を越え、世界的にもアメリカや北欧諸国に続く普及率をみせている。シンガポールと香港がこれに続き、98年末で19%近いから、現時点ではすでに20%に達したと推定できる。さらに、ニュージーランド、台湾が15%前後で並んでいる。
 日本は98年末時点でようやく10%を越える普及で、抜群に高い経済水準を考えると、この数字は案外低いといえる。このところの不況で、企業利用をはじめとして、率的には案外伸び悩んでいるとみられる。言い換えれば、まだまだ利用が伸びる余地はおおきいのだ。
 その他の途上国は、人口比で2%を切っていて、まだ普及率は低い。ただし、多くの途上国では、経済上の理由から、1つのアカウントを家族や友達などが複数利用していることが多く、実際の利用者数はアカウント数の2倍から3倍とみなされる。自宅に電話とパソコンがなくても、大学や職場、あるいはインターネット・カフェなどからアクセスし、最近普及しているフリーメールを使えば実用上問題ない。たとえばマレーシアでは、利用者実数では80万人から100万人といわれ、人口あたりの普及率で5%に達しているものと推定できる。
 中国は政府が海外からの反体制的な情報の流入を警戒して慎重だったが、最近、情報産業の育成と国民の情報化を推進する報告に政策をおおきく転換し、インターネットの利用も急速に伸び始めている。インドも同様に、これまで国営の1社が独占してきたプロバイダー市場の開放に踏み切り、今年から来年にかけて、インターネット市場がおおきく開花するものとみられる。さらに、ベトナム、カンボジア、ラオスなどインドシナ半島の社会主義系の国でもインターネットは徐々に浸透をはじめ、最近ではミャンマーも情報鎖国から政策が転換される兆しがみえている。

 インターネットに接続されているホストコンピューターの台数を国別にみると、日本が160万台を越えて、圧倒的に多い。これは世界でも米国に次いで2番目である。これに続くのが、オーストラリア、そして最近急速にインターネットが普及している台湾で、さらに韓国、ニュージーランド、香港、シンガポールと続く。この傾向は、人口あたりの普及度とおおきく変わらない。



1−3 インターネット市場全体の潮流:IPネットと自由化


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 インターネットを中核とする現在のアジアの通信ビジネス全体を特徴づけているのは、以下の二つの大きな潮流である。
 第一が、技術革新に裏打ちされた、IPネットワークへの流れである。WDM、ギガビット・ルーター、光通信などの新しい技術の流れが、これまで高コストで稀少資源とされてきた国際通信、長距離通信のコスト構造を根本的に変革し、帯域の供給を大幅に増加させていることはグローバルな潮流だが、この流れはアジアにも確実に到来している。
 その一つの現れが、1999年3月、シンガポールで「SDHとWDM」と題した会議が開催されたことにも見られる。この会議の主要スポンサーはアルカテルとルーセントだったが、これに並んでWDMの伝送装置のトップメーカーであるシエナ社もスポンサーに入り、主として通信キャリアに対して、IPネットワークの基本設備の積極的な売込みを展開した。ここでは、今後の通信がIPを中心に展開されることが明確に宣言され、アジアでもIPネットの流れが主流になろうとしていることを如実に示した。
 第二の大きな流れが、WTOによって合意された通信の自由化で、アジア諸国も原則として2002年までに通信事業の自由化、即ち国内市場での競争の導入と、外資参入制限の撤廃を行うことになっている。
 97年に経済危機が発生するまでは、アジア諸国の通信市場の育成・発展は活発な経済成長に支えられて順調に進展するものと見られてきた。それでも、通信インフラを欧米先進国なみに整備するためには膨大な資金が必要とされ、国家財政や既存キャリアによる自己資金だけでは賄いきれない国が多く、先進国からの開発援助に加えて、民間資金を導入するプロジェクトファイナンスの導入も活発に行なわれてきた。その点からも外資導入を含む通信市場の規制緩和と自由化は必然と考えられてきた。
 しかし、規制緩和・自由化とはいっても、多くの国では、依然として政府・担当官庁が基本計画を立案し、国が資本の過半を保有する形で公社・公団を形だけ「民営化」し、計画の実施にあたっては国の厳密な監視の下で段階的に競争を進めていく「マネージド・コンペティション」が主流だった。外資の出資比率には制限が加えられ、新規事業者は政府に入札・審査された上で事業開始が認められるという方式である。
 ところが経済危機が深刻化した結果、状況は大きく変わった。タイ、マレーシアなどでは現在の事業の継続にも困難をきたす事業者が続出し、やむをえず外資規制比率を大幅に引き上げ、欧米企業からの投資によって救済を図る事例がみられた。これが、皮肉にも外資参入制限の緩和、自由化の一層の促進という結果を生んだ。
 通信自由化の流れは、中国にも及んでいる。これまで中国は、通信などの主要インフラ分野は国家主権の根幹にかかわるとして、外資の参入を厳しく制限・拒絶してきた。しかし、WTOに加盟によって貿易の大幅な拡大、経済の一層の発展をめざす中国政府は、99年4月の朱容基首相の訪米時に、ついに通信事業に関しても外資の参入を認めることをクリントン大統領に約束した。
 これに対して国内の官僚たちの抵抗はかなり強いという。しかし、世界の大きな潮流に中国が単独で抵抗することは困難であり、大局的には欧米資本との協力関係を進化させることで、情報通信産業の育成とそれによる経済全体の発展を狙う戦略は今後より進展することはあっても、後退することはありえないと見られる。
 現在、世界の通信業界においては、AT&TとBTによる合弁会社の設立に始まり、ドイツテレコムがテレコムイタリアと合併すると宣言し、これにオリベッティが対抗するなど、欧米系の電話会社同士の大型合併、連携の動きが急だが、この動きは、規制緩和・自由化が進むアジア全域に加速度的に波及することは必至と予測される。さらに、米国の新興勢力であるクエストやグローバルクロッシングなどが、従来の地域電話会社などとの提携・合併をするなど、世界市場の急成長を期待しての動きは激しい。
 こうした流れのなかで、アジア各国の「国策電話会社」も、これまでのような単独事業で生き残ることは容易ではなく、今後数年以内に、欧米系企業に事実上買収されたり、戦略提携に踏み切る可能性は相当高いと思われる。
 これらの動きの底流には、もはや音声電話が通信の主役ではなく、明らかにインターネットに代表されるデータ通信、IPネットワークが主流になるという認識がある。



1−4 中国、インドなどの後発市場でも成長が始まる


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 国別でのインターネット利用の対人口普及率では、前述したように、オーストラリアとシンガポールが20%の大台を越え、ニュージーランド、台湾、香港、日本が10%を越えて、これに続いている。とくに台湾と香港は、98年に人口比で日本を上回り、加速度的な普及をみせていることが注目される。韓国、マレーシアがこれに続き、それぞれ政府がインターネットの普及に力を入れていることの影響が現れている。これら各国でのインターネットの順調な発展は、経済水準およびこれまでの経緯からみて順当な結果といえる。
 その一方、経済発展自体が低水準で、これまではインターネット市場としても明らかに後発国だった中国とインドが、ここにきて政府の積極的な政策転換の結果、急成長が始まったことが注目に値する。いうまでもなく、両国とも人口では世界一位と二位という超大国で、普及率自体はたとえ低くとも、利用者の絶対数では大きな潜在力があり、インターネット市場として、無視できない規模に早期に達することは間違いない。
 中国は政府の強力なインターネット振興政策の推進に加えて、欧米企業の進出意欲も強く、アジアのインターネット市場における新興勢力として、今後の動向がおおいに注目される。インドは長い間政府系プロバイダー1社の独占状態が続いていたが、利用者から商用ネットワークの解禁を求める圧力が高まり、98年後半にようやく独占体制が打破され、民間企業による新規参入が始まろうとしていることが、大きな成長要因となっている。両国とも情報技術産業分野に必要な優秀な人材の供給では、豊富な資源をもち、インターネットの導入・普及によって世界の情報産業市場でさらに大きなプレゼンスを得ることが可能となる。
 中国には、シスコに代表されるアメリカの機器ベンダーやAT&Tなどの通信事業者が活発な市場参入努力を始めている。上海、広州、山東省など、地域別に、電話会社がADSLを導入したり、あるいはケーブルテレビ回線でケーブルモデムを導入するといった新規プロジェクトが動き始めている。これらの沿海部では、光ファイバーの導入も着々と進んでいるところから、外資系の技術力を導入することで、インターネット市場が一気に拡大することは十分考えられる。

 人口面では同じく大国であるインドネシアは、経済危機の打撃が依然として高く、インターネット市場も伸び悩みを示している。1999年に利用者数がようやく10万人に達したとみられ、普及度では相当遅れをとった。もっとも、インドネシアでは正確な統計が存在しないために実態がつかみにくいことも、数字が低いことの要因と考えられる。ただし、99年に入って、インドネシアでもパソコン市場が回復傾向にあると伝えられ、インターネット市場も徐々に上昇への道筋を歩むとみられる。このほか、タイ、フィリピンなどは、市場の成長率では中位に位置しているが、今後の経済が回復するにつれて、成長率はさらに高まる可能性が高い。
 さらに、従来はインターネットへの警戒感が強かった社会主義系を中心とした諸国でも、インターネットに積極的な国が増えている。ベトナムでインターネット市場の伸びが始まりつつあるほか、ミャンマーでも政府が情報産業の振興へと政策転換をはかり、インターネットにも従来の「情報鎖国」政策を緩和して、その導入に踏み切るものとみられる。カンボジア、ラオス、ネパールなども、インターネットの普及の流れはより顕著になりつつある。


1−5 政府の強い政策プッシュ


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 アジア各国は、先進国から途上国にいたるまで、政府が情報化施策に対して政策的に高い優先度を与え、その中核にインターネットの普及を掲げている国が多い。とくに学校教育へのインターネットの導入には各国とも熱心で、21世紀の前半にすべての学校にインターネットの導入を図るという政策目標を上げている国として、日本、韓国、台湾、タイなどがあげられる。
 産業政策としての情報化施策でも、インターネットの推進はいわば「ナショナルフラッグ」化している。この点では、シンガポールがいち早く抜け出し、政府によるインターネットの業務利用の普及度がきわめて高いことが目立つ。最近では台湾政府と香港政庁が、それぞれインターネット関連産業の育成に本腰を入れている。さらに、マレーシア、タイ、ベトナムなどがこれに続いている。
 マレーシアでは、マハティール首相が強力に推進しているマルチメディア・スーパーコリドール(MSC)構想が有名だ。外国からは、経済危機の影響で、進行が大幅に遅れるのではとの懸念も強い。しかし、政府は強気で投資を進め、99年7月には、中核都市サイバージャヤが一部完成し、マルチメディア大学が開設されるほか、テレコムマレーシア、さらにNTTが研究センターをオープンし、実際の利用が始まろうとしている。
 シンガポール政府が推進する「シンガポールONE」も、ADLSやケーブルモデムによるビデオ・オンディマンドの実験サービスが続けられているが、むしろ主流は画像サービスよりも通常のインターネットの利用にあるとの認識が広がり、政府の政策も、インターネット重視に移行しつつある。





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