まえがき
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マレーシアが21世紀情報社会の「先取り」をめざして推進しているMSC(マルチメディア・スーパー・コリドール)計画は、最初に提唱されてから丸2年が経過し、ビジョン確立の段階から、本格的な実現段階へと移行しつつある。現地サイバージャヤでは、ブルドーザーが唸りをあげて大地を削り、トラックが土砂を満載して頻繁に移動している。今春には新国際空港が開港し、今秋には首相官邸の移転が予定されている。世界初の「マルチメディア・ユートピア」が果たして理想通りに実現できるのか、突然のアジア経済危機を背景に、厳しい現実の前に挫折を余儀なくされるのか、世界が注目しているその行方を可能なかぎり掘り下げることが、本調査の第一の目的である。
マハティール首相のMSCに賭けるエネルギーの高さには想像以上のものがある。情報化の潮流は一個人の情熱だけで説明できるものではないが、歴史の節目には個人の情熱や情念が重要な働きをすることが多いのも真実だ。一方では事実に基づき、わかりやすく正確な記述を心がけた。ただし単なる事実の羅列で終わることなく、主要人物の描写も含め、できるだけ醒めた眼での分析を目指した。このプロジェクトの帰趨には社会的・文化的な流れが決定的な役割を果たすと考え、最低限必要な範囲で、マレーシア社会の歴史・文化的な潮流にも触れた。
基本視点として、単純な「推進」一辺倒ではなく、良い意味での「建設的批判」を試みた。何より、皆さんのMSCに関する企業戦略の立案・意思決定に役立つ内容を提供するべく心がけたからである。とくにMSCの土台といえる通信インフラのあり方については掘り下げて論じた。アジアにおけるインターネットの普及を目指す当研究所の主要関心事であり、現在の「上からの」ネットワークづくりの方向性に少なからず疑問を抱いているからだ。
本報告書は、1997年4月からクアラルンプールに移住し、研究所を設置して開始した調査研究活動の中間報告でもある。アジアインターネット研究会としては、3冊目のアウトプットである。書籍、新聞・雑誌などの文献による記述も多いが、関係者への直接の面談・取材、会議への出席を重ねた結果得た視点も少なくない。いちいち述べなかったが、私たちの日常的な活動にご支援をくださり、貴重なヒント、情報を与えてくださった関係者の皆さんすべてに、あらためてお礼を申し上げたい。
また、当研究所の存在基盤を財政面で支えてくださっている、アジアインターネット研究会の企業会員と個人会員の皆様には、とくに厚くお礼を申し上げたい。今後とも、皆様に貢献できる研究活動を続けることをお約束すると共に、引き続いてのご支援を切にお願いする次第である。
1997年12月末日
アジアネットワーク研究所
代 表 会 津 泉
Copyright(C) 1998 アジアネットワーク研究所
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