インターネットでの表現の自由とは
日本インターネット協会会報 1996年4月 所収
会津 泉
今年はじめ、日米で連続する形で起きた二つの「事件」は、今後インターネットが一般社会の中に広く受け入れられていくかどうかを大きく左右する問題点を浮び上がらせた。
日本では、96年1月31日、警視庁が「わいせつ図画公然陳列罪」の疑いで、インターネット・プロバイダーのベッコアメ・インターネットの本社事務所と、28歳の会社員と16歳の高校生の自宅を家宅捜索した。そして翌1日未明に会社員は逮捕され、20日には東京地検に起訴された。この事件について、警視庁は深夜の記者会見を行なって発表する異例の扱いをした。事件の重要性をアピールする狙いがあったとの見方もされている。
日本ではこれまでにパソコン通信では「わいせつ画像」を配布したとして逮捕された事件はあったが、インターネット上で流したとの容疑による逮捕・起訴は初めてのことだった。インターネットへの関心が高まっている折りから、この事件はメディアでも注目され、新聞各紙が社会面で大きな見出しや写真とともに報道し、テレビのワイドショーでも取り上げられたほか、一般の週刊誌でも「もっと過激な画像が今でも外国のサイトで見ることができる」といった、かなり興味本位な記事まで登場した。
警視庁は国内のプロバイダーとユーザーの行為に対しては刑法違反で立件可能と判断したが、外国からの画像の流入に対しては摘発はできないとの考えのようで、少なくとも現在は何も動きはない。
その結果、皮肉なことに、これまではインターネットにはあまり関心がなかった層にも、「インターネットならエッチな画像が見られる」といった認識をもたれる結果となったことは否定できない。あらためて、インターネットが国境を容易に超えるメディアとしての性格をもち、国内法体系だけでは規制できない性質のものであることが浮彫りになったともいえる。
◆「下品な情報内容を規制」──米国で通信品位法成立
一方、米国では日本で逮捕があったのと同日の2月1日(日本時間では2日)、連邦議会の上下両院が「連邦通信法改正案」を賛成多数で可決し、1週間後の2月8日には、クリントン大統領が署名をして発効、成立した。この法案は、92年に「情報スーパーハイウェー」を提唱して当選したクリントン=ゴア政権の懸案の「公約」でもあり、通信、CATVなどの大幅な規制緩和と相互参入を柱とする法案のはずだった。ところが、94年に、雑誌『タイム』が「サイバーポルノ」という特集を組んで、インターネット上にはわいせつなポルノ画像が氾濫しているとセンセーショナルに報道したことなどが契機となり、未成年にわいせつ画像を見せてよいのかというキャンペーンが、主としてキリスト教保守団体などによって進められていった。その結果、エクソン議員らによって「下品(indecent)な通信」を規制する「通信品位法」条項が追加され、市民団体をはじめ、パソコン通信事業者、ソフトおよびハードのメーカーなどが反対したが、結局ほとんどそのまま成立したものである。
同法では、第5編として「わいせつ及び暴力」という独立したセクションが設けられ、「州際通信又は国際通信について、故意に、他人を不快にし、虐待し、脅迫し又はいやがらせをする目的で、わいせつな、淫らな、好色な、卑猥な又は下品な論評、要求、提案、申し出、画像その他の通信」について、その「通信を行ない、作成しまたは要請すること」および「伝送を行なうこと」を禁じ、違反すれば最高25万ドル(2500万円)および二年の禁固に処するという厳しいもの。さらに「州際通信又は国際通信において故意に、双方向コンピューター・サービスの利用者が呼を発し又は通信を始めたかどうかにかかわらず、現代のコミュニティの基準に照らして明らかに不快感を与えるとされる用語によって、性的な又は排泄の行為又は器官を文脈上描写し又は記述する論評、要求、提案、申し出、画像その他の通信」について、「18才以下の特定の者に伝送すること」と「18才以下の者が利用可能は方法で表示する者」にもこれが適用されるとした。
ただし、自らの支配下にない設備、システムやネットワークへのアクセス、接続を提供したことだけでは適用されないとし、また、未成年者によるアクセスを制限し又は防止するために合理的、効果的かつ適切な措置を誠実にとれば、適用を除外されるとの条項も付加され、具体的には、クレジットカードなどの認証手段のある支払手段、成人アクセス・コードや成人識別番号の使用を要請してアクセスを制限すれば、適用除外されると明文規定した。
この法案が上下両院で圧倒的多数(上院では反対5名)で可決された直後、米国では「市民の言論・表現の自由が抑圧される」として、EFF(電子フロンティア協会)やインターネットなどの利用者団体をはじめ、オンラインサービス会社、コンピューター業界、出版業界などから抗議運動が起きた。そして、2月8日の大統領の署名直後から24時間、自らのホームページの背景を黒塗りにすることで抗議の意思表示をする運動が呼びかけられ、「YAHOO」や「WIRED」などのホームページが真っ黒に表示された。また、同様に「ブルーリボン」の着用が呼びかけられ、いまも続いている。
さらに市民運動団体および企業などから成る連盟は、フィラデルフィアの連邦地方裁判所に、同法は言論の自由を保障した合衆国憲法修正第1条に違反するとして、適用差し止めの訴訟を起こし、一週間後の2月15日には、連邦地方裁判所の判事は、同法は一部違憲の疑いが強く、長期の審理を必要とするとして、一時的に同法の適用を差し止めを命じる判断を示した。
なおこの裁判では、原告として、複数の市民運動団体と3万人もの個人に加えて、以下の表にある企業、業界・専門団体などが名を連ねていることが注目される(訳は一部私訳)。
CDA違憲訴訟 原告団(一部)
- アメリカ図書館協会(American Library Association)
- アメリカ・オンライン(America Online, Inc)
- アメリカ書籍販売者協会(American Booksellers Association)
- アメリカ新聞編集者協会(American Society of Newspaper Editors)
- アメリカ出版協会(Association of American Publishers)
- 出版者・編集者・著者協会(Association of Publishers, Editors and Writers)
- 市民インターネット・エンパワーメント連合(Citizens Internet Empowerment Coalition)
- 商用インターネットエクスチェンジ(CIX:Commercial Internet eXchange)
- コンピュサーブ社(Compuserve Information Services, Inc.)
- インターネット検閲に反対する家庭(Families Against Internet Censorship)
- 読書の自由協会(Freedom to Read Foundation)
- ホットワイヤード・ベンチャーズ(HotWired Ventures Ltd.)
- インタラクティブ・ディジタル・ソフトウェア協会(Interactive Digital Software Association)
- インタラクティブ・サービス協会(Interactive Services Association)
- アメリカ雑誌出版協会(Magazine Publishers of America)
- マイクロソフト社(Microsoft Corporation)
- マイクロソフト・ネットワーク(Microsoft Network)
- ネットコム社(NETCOM On-line Communications Services, Inc.)
- アメリカ新聞協会(Newspaper Association of America)
- プロディジー(Prodigy Services Company, Inc.)
- プロフェッショナル・ジャーナリスト協会(Society of Professional Journalists)
- ワイヤード(Wired Ventures Ltd.)
これを見ると、インターネットなどのインタラクティブ通信サービスが対象となっているにもかかわらず、新聞・雑誌など既存の出版業界にも強い反対の声があることが特徴であることがわかる。
ここで明確にしておく必要があるのは、日本で警視庁が摘発したのは、刑法に触れる「わいせつ物」であるのに対して、米国で問題となっているのは「わいせつ物」ではなく、「下品な内容」である点だ。
何が「わいせつ」であるかそうでないかという定義は、それ自体重要な問題であるが、米国ではその点が議論の中心になっているのではなく、「わいせつとはいえないが、子供には見せたくない、下品であったり好色であったりする内容のもの」を、未成年者に見せることを禁じようという趣旨の法案に、関係者が反対しているのだ。
端的にいえば、日本の成人映画やビデオなどはもちろんのこと、そう露骨な描写でなくても、一般の週刊誌のヘアヌードでも罰せられる可能性は高く、また画像ではなく文章表現も対象にされているから、厳密にいえば、「好色な文章」つまり、新聞の連載小説のラブシーン程度でも、未成年が読めるとすれば違法になると解釈可能なのだ。これはさすがに規制範囲が曖昧でかつ広過ぎるし、拡大解釈の恐れも強いというので、これだけの組織から反対され、また連邦地裁としても訴えを一部でも認めざるをえないということになった。
それだけ問題が多いものを、それではなぜ議会は圧倒的多数で可決してしまったのかということが疑問になるかもしれない。端的には、議会ロビイストでもあるキリスト教右派系団体の「インターネットで子供にポルノを見放題にさせることに賛成するのか」式の猛烈なキャンペーンに、選挙の票の行方を気にする議員心理が抵抗できなかったとの見方が強い。
その意味では、日本の、明らかに「ハードコア・ポルノ」を、「悪いとは知りつつ、調子にのって流し続けた」(逮捕された会社員の談話)ものが、既存の刑法で摘発された事件とは、問題の質が違うという見方も成り立つ。
◆インターネット関係者全員に重要な問題
しかし、インターネットを事業とする企業、とくに多数の会員を抱えるプロバイダーにとっては、ベッコアメが「共犯」の疑いをかけられ、警察の捜査の対象にされただけに、他人事として済ます訳にはいかない。いや、インターネットに関係する人々にとって、インターネットに営利事業としてかかわる人はもちろん、一般の利用者、仕事で使う人々も含むすべての関係者にとって、今回の日本の事件は、重要な問題を提起していると考える必要があるだろう。
新聞・雑誌などの報道によれば、この事件は、95年11月下旬に、実際の画像のコピーを同封し、「こんなものがインターネットで掲載されているが、いいのか」という手紙が警視庁に送られてきたことがきっかけだったという。ただし、手紙による告発者がだれであるかは明らかにされていない。
これについて、ベッコアメの尾崎社長はこう述べている(2月17日テレビ東京番組「どうなる日本のインターネット」などでの発言)。
「警察の捜索は、事前の通告もまったくなく、突然やってきた。風俗営業の取締りのような、『オマエラ何やってんだー』と入ってきたのが、普通の事務所で普通に仕事しているので調子が狂ったようだ。
しかも、事前にしっかり調べてきているかと思って色々質問したところ、インターネットについてはまったく理解していないことがわかって、愕然とした。たとえば、外国のわいせつ画像に簡単にアクセスできるけど、それはどうなるのだと質問したら、『そんなことができるのか?』というのが、最初の反応だった。逮捕された二人宛ての電子メールのファイルも押収していった」という。
尾崎氏の発言の通りであるとすれば、警察はかなり強引に捜査を進めたという可能性は否定できない。この点、朝日新聞社の雑誌『DOORS』96年4月号の記事では、警視庁生活安全部保安課の竹之内警視は「家宅捜索の前に、講師を呼んでかなり勉強した。刑事の中には、これを機にパソコンを買った者もいる。」と書いてあるが、それ以上詳しい記事はない。
ベッコアメに対して、批判もある。プロバイダーとしてはユーザーのホームページについても、「公序良俗に反しない」ことを契約条件としているところもあり、ベッコアメもそうすべきではないか、というのだ。
この点について、ベッコアメでは、ホームページの内容は基本的にはユーザーの「自由」であり、プロバイダはその内容に関知しないと明言しつつ、ユーザーに日本国の法律の遵守を求め、いわばユーザーの「自己責任」を求めている。尾崎社長は『DOORS』の取材に対して「こちらの規約に合意した上で、契約することになっているので、削除できた。しかし高校生の場合は公開の意思が確認できなかったので、[削除]できなかった。[会社員の]「カメ」の場合、知ったのが家宅捜索の4日前だったので対応がとれなかった」と述べている。
ベッコアメでは自社のホームページのアクセスについて、詳細なデータをホームページで公開している。それには、現在も個人ホームページのアクセス数のランキングが含まれている。摘発当時も、問題のホームページも含めて、アダルト系のホームページが上位を占めていたという指摘があるが、確認はできていない。ちなみに、本稿執筆時点では、第1位は「TOKYO TOPLESS」という、風俗系の情報やヌードフォトなどが満載されている、どちらかというとアダルト系の頁だった。ただし、刑法に触れるような露骨な写真などは、摘発直後から、「自主規制」によってほとんど姿を消し、尾崎社長によれば「コスプレとか、普通の水着といった、別に問題ないものまで、委縮して掲載をやめてしまったものがある」ということで、「ユーザー側の自己規制で自由が失なわれる心配が強い」とも述べている。
同じプロバイダーとして、米国系のPSIジャパンの伊藤穣一社長は、「アメリカのPSIも、逮捕覚悟で準備している。我々はあくまでお客様の『通信の自由』を守る義務があり、そのためには闘う必要がある。ベッコアメも断乎として自由を守るべきで、そのためには協力したい」と述べている(テレビ東京番組「どうなる日本のインターネット」での発言)。
こうして、プロバイダー自身が利用者のホームページの内容にまで規制の責務を負うのか、それとも徹底的に自由を守るべきなのかでも、意見は分かれている。日本の場合、警視庁はベッコアメ自体はいまのところ起訴の対象とはしていない。ただし、家宅捜索と事情聴取を行なったのは事実であり、まったく責任がないとは判断していないようだ。
◆「倫理綱領ガイドライン」と、抗議の声
なお、こうした問題に対して、2月16日、通産省の外郭団体の電子ネットワーク協議会は、「電子ネットワーク運営における倫理綱領」と「パソコン通信サービスを利用する方へのルール&マナー集」を公表した。通産省もこれを「自主ガイドライン」として高く評価し、「今後、このガイドラインに沿った運用がなされ、倫理問題の解決が図られることを期待したい」との報道資料を同協議会との連名で出した。
これに対して、3月4日、インターネットのメーリングリストでの呼びかけで集まった人々による「抗議声明」が発表され、賛同する署名者は140名ほどになった。彼らは、「多くの事業者やユーザーとの討議に付すこともなく、一方的に公表した」として、「 1. ユーザーの情報の内容に踏み込んだ規制である。2. 適用に歯止めがない。 3. ユーザーの通信の秘密を遵守できない。 4. 検閲の恐れがある。 5. ユーザーの発言権の保障がない。 6. 多様な価値観への配慮がない。 7. 「倫理綱領」は一方的な押しつけでしかない。」と強く批判している。4月4日には、これらの文書の撤回を要求する有志が通産省を訪問し、担当者との交渉を行なった。
通産省は、「『倫理問題については、何らかの対策が必要ではないか、しかも、それは法的な拘束力を持って規制するものではなく、民間の自主的な対応で行うことが適当なのではないか』との視点に立って、対応の一つのたたき台として作られたのが、今回のガイドラインであると認識しています。このガイドラインの発表を機に様々な議論が起こり、ネットワークを巡る倫理問題についてより多くの人が目を向け、対応の在り方について意識を高めていただくことを望んでいます。当然、こうしたガイドラインのような自主的対応についての反対や抵抗もあるでしょうし、賛成の意見も強制力のある規律を求める声も予想されるところです。重要なのは、賛否両論、多岐にわたる意見が出てくることで、そうした健全な意見のやりとりの中から少しずつコンセンサスが生まれてくるものと思われます。通産省と電子ネットワーク協議会が発表した『自主ガイドライン』はそれへの一石を投じるものであればと考えます。その意味で、今回の『倫理綱領に抗議します』の表明について、健全な議論の一翼を担うものとして、通産省は歓迎したいと思います。」としつつ、同文書そのものの撤回は「意味がない」として退けた。
日本インターネット協会では、4月13日、プロバイダーなどによるIS(インターネット・サービス)部会でこの問題を中心に議論をし、基本的には各事業者の自主的な対応を尊重しつつ、その動きの集約をINET96で報告する予定でいる。筆者は、個人的には、日本インターネット協会としても警察および検察当局と正式な接触をはかり、インターネットの本質を踏まえつつ、何がどこまで合法で、何が違法であるのかを社会的に明確化する作業を、関係者全体に呼びかける形で進めていく必要があるのではないかと考えている。
【参考ホームページ】
【参考】ベッコアメ ホームページでの告知
●ユーザ・ホームページ登録サービスについて
ユーザ・ホームページ登録サービスは、ベッコアメ・インターネット接続サービスをご利用中のお客様の中で、ご希望される方を対象に、無償で提供するものです。本サービスは、以下の各項をご理解の上ご利用くださいますようお願い申し上げます。
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- (株)ベッコアメ・インターネット側の障害により、お客様のホームページのデータが損害を受けたとしても、(株)ベッコアメ・インターネットはこれを補償いたしません。
- ホームページ登録サービスは、日本国の法律を遵守してご利用ください。
■2/01
みなさまの中にも、マスコミ等でご存じの方もおられると思いますが、1月31日に弊社および、弊社ユーザの2名が、わいせつ図画公然陳列容疑で家宅捜査
されました。内容は、ユーザ・ホームページ内のわいせつ図画に関するもので、インターネット上での初めての摘発となりました。
弊社は一昨年の秋から、業界では初めてユーザ・ホームページ登録サービスを
展開してまいりました。本サービスにおける、弊社の基本的な考え方は、「自由」です。ですから、ユーザ・ホームページ上でご商売されても、あるいはアダルト的なページを持たれても、それらを弊社として、特に規制してはおりませんで
した。
しかし、ユーザ・ホームページのトップにも掲げておりますように、「法の遵守」という基本原則があります。インターネットはもはや、テレビや新聞のような、公共性をもったメディアです。当然、公共の場には守るべき「ルール」があります。
インターネットは、各国の文化や法の違いを半ば暴力的に平均化します。そういった性質上、数々の問題も発生します。
私は、「法の遵守」は「規制」とは考えていません。「法の遵守」をすること
により、真の「自由」が得られると考えます。「法の枠の中の自由」ではなく「法に守られた自由」という解釈です。インターネットには、もともと「法」がありません。利用者一人一人が気持ちよく利用できるように、お互いがモラルを持って今まで発展してきました。
ですから、今回のように、モラルで発展してきたインターネットに、「法」の
メスが差し込まれたことに関して、ネットワーカーの一人として残念でなりません。本来、モラルは「法」よりも狭い領域にあるはずです。
私たちは日本人です。日本人は日本人のモラルを持ってインターネットを利用
する必要があると思います。
私は、今後も弊社のユーザ・ホームページ登録サービスに対する「自由」という考え方を捨てるつもりはありません。アダルト系を一概に禁止するつもりもありません。我々が保つべきモラルのもとにおいて、ユーザの方々に存分にご利用していただきたいと思っています。
みなさまのご理解とご協力をお願い申し上げます。
ベッコアメ・インターネットは、ネットワークが好きなメンバーが集まって発足しました。このことを忘れないでください。そして、このことを信じてください。
平成8年2月1日 株式会社ベッコアメ・インターネット 代表取締役社長 尾崎憲一
平成8年2月16日
電子ネットワーク協議会
電子ネットワーク運営における倫理綱領
(目的)
本綱領は、電子ネットワークを介してパソコン通信サービスを提供する国内の事業者および主催者(以下、電子ネットワーク事業者という)に対して、その運営理念、運営規模あるいはその運営形態にかかわらず、他人への誹謗中傷、公序良俗違反など様々な倫理問題が生じないようにするための基本方針を提示することにより、電子ネットワーク社会の健全な成長、発展に寄与することを目的として作成したものである。
(基本理念)
電子ネットワーク事業者は、ネットワークが社会に対して根本的な変革の力となるインパクトを持つものであると共に、賢明な使い方により今後の社会の発展、福祉向上のための有効な手段となることを認識し、以下の基本理念を遵守する。
- 電子ネットワークにおいて、言論の自由、人権の尊重など日本国憲法の精神を尊重する。
- 電子ネットワークにおいて、法および社会慣習により遵守すべきとされる公序良俗を尊重する。
- 全ての人が下記の事項に関して、電子ネットワーク上で不利益を被らないよう配慮する。
著作権、特許および商標などの知的所有権
名誉および信用
肖像権、プライバシーに関する権利などの人格権
- 電子ネットワークにおける良きマナーを啓発する。
- 電子ネットワークにおける寛容の精神を醸成する。
(運営基準)
上記を達成するために、電子ネットワーク事業者は、以下の基準に従った電子ネットワークの運営、管理を徹底する。
- 会員規約の整備 電子ネットワーク事業者は、その契約形態にかかわらず、パソコン通信サービスを利用する者(以下、会員という)が守るべき義務や禁止行為、電子ネットワーク事業者が取りうる処置についての規約(以下、会員規約という)を設定し、会員に徹底する。
- 1-1 電子ネットワーク事業者は、会員規約を整備し会員に徹底する。また、変更があった場合には、掲示板への掲示などにより会員に知らせる。
- 1-2 会員規約には、会員が守るべき義務や会員に対して禁止される行為および禁止行為に対する電子ネットワーク事業者などによる対応を明記するように努める。
- 対応窓口の明確化と管理体制の整備 電子ネットワーク事業者は、会員からの申し出に対して、的確な対応がとれるよう対応窓口を明確にすると共に、管理体制を整備する。
-
- 2-1電子ネットワーク事業者は、会員からの申し出に対応するための対応窓口を設定し、広く会員に告示する。また、上記対応窓口に対する会員からの申し出に対し、できるだけ速やかな対応に努める。
- 2-2 電子ネットワーク事業者は、それぞれのケースに関して対応するための内規を整備し、対応する者によりその対応方法が異ならないよう心掛ける。
- 啓発活動の徹底 電子ネットワーク事業者は、健全なパソコン通信サービスの発展を目指して、会員に対してルールやマナーを徹底するよう努める。また、通常では分かりにくい規約上の補足事項として会員規約の具体的例示や詳細説明を記載し、日常から注意を喚起していく必要がある。
- 各種システムの整備及び対応方針の明確化 電子ネットワーク事業者は、電子ネットワークにおいて発生しうるトラブルを未然に防ぐため、各種システムを整備すると共に、各種サービス別に対応した指針を明確にして運営するよう努める。
以上
電子ネットワーク事業における倫理問題に係る自主ガイドラインについて
平成8年2月16日
通 商 産 業 省
電子ネットワーク協議会
- 最近のパソコン通信やインターネットの発展に伴い、電子メール、電子掲示板などの各種サービスにおいて、他人への誹謗中傷、公序良俗に反するような情報の提供など様々な倫理問題が顕在化してきている。
しかしながら、このようなネットワークを巡る倫理問題については、従来、標準的な指針、基準もなく、個々の電子ネットワーク運営者の判断に委ねられてきたところである。
- かかる状況に鑑み、パソコン通信サービスを提供する国内の事業者を会員とする電子ネットワーク協議会(注1)の中に基本問題分科会を組織し、電子ネットワークを活用する上での倫理的観点から必要であるガイドラインを策定すべく検討を進め、今回、「電子ネットワーク運営における倫理綱領」及び「パソコン通信を利用する方へのルール&マナー集」を作成した。
この種の検討は、米国においてインターネット技術タスクフォース(IETF)によるネチケットガイドラインが昨年10月に作成されているのみであり、我が国では初めての成果である。
- 通商産業省は、従来より、コンピュータネットワークにおけるプライバシーやセキュリティの問題に取り組んできたところであるが、パソコンの普及が急速に進展し、パソコン通信、インターネットを活用した電子商取引(エレクトロニックコマース)等に対する期待が高まっている中で、様々な倫理的な問題が、こうした情報化の流れを阻害することに対する懸念を抱いていたところである。他方、過剰な規制をかけることは、ネットワーク上での自由な情報の流通を阻害することにつながるという懸念も指摘されている。
- こうした状況の中で、通商産業省としては、この度、ネットワーク事業者により業界としての自主的なガイドラインが策定されたことは非常に重要であり、かつ高く評価できるものと考えており、今後、このガイドラインに沿った運用がなされ、倫理問題の解決が図られることを期待したい。
- なお、商務流通審議官及び機械情報産業局長の私的研究会である「電子商取引環境整備研究会」においても、電子商取引に伴って生じる様々な制度的課題(損失負担、国際取引、電子決済等)の中の一つとして、かかる倫理的な問題について、有識者、ネットワーク事業者、消費者代表等の方々にも参加していただき、鋭意検討を行っているところであり、そこでの議論においても、今回のガイドラインを踏まえたものとしていきたい。
- 「電子ネットワーク運営における倫理綱領」の要点本綱領は、電子ネットワークを介してパソコン通信サービスを提供する国内の事業
者および主催者に対して、その運営理念や運営規模あるいはその運営形態にかかわら
ず、誹謗中傷、公序良俗違反など様々な倫理問題が生じないようにするための基本理念および運営基準を提示したものである。
基本理念としては、言論の自由、人権の尊重など日本国憲法の精神の尊重、公序良俗の尊重、知的所有権やプライバシーに関して関係者が不利益を被らないよう配慮すること、良きマナーの啓発、寛容の精神の醸成があげられている。
運営基準としては、会員規約の整備、対応窓口の明確化と管理体制の整備、啓発活動の徹底、各種システムの整備及び対応方針の明確化について、運営者として行うべき事項が示されている。
- 「パソコン通信サービスを利用する方へのルール&マナー集」の要点
パソコン通信の世界も、一般社会と同じように、多くの人が様々な目的をもって参加し、その利用形態もまちまちである。このような電子ネットワーク社会の中で楽しく、そして役に立つ交流をスムーズに行っていくためには、一般社会と同様に、お互いが会員双方の立場を尊重し、優しさと思いやりを持つようなエチケット、マナーを
守って、節度ある行動を心掛けることが非常に大切である。また、普段の生活ではうっかり見落としがちな著作権などの様々な権利や、パソコン通信のルールなどにも気をつける必要がある。
本ルール&マナー集は、上記のような観点から健全なパソコン通信サービスの成長、発展に寄与するべく、利用者に対して、基本原則、ユーザID/パスワード、電子メール、電子掲示板や電子会議室、著作権の取り扱い、ウイルス対策などに関するルール、マナーなどについて例を交えながらまとめたものである。
- 本倫理綱領及びルール&マナー集は、当協議会会員の他に、会員数1千人以上のパソコンネット約100局および主要インターネット・プロバイダに本日送付した。当協議会としては、ネット運営者を対象とする相談窓口の開設など、今後も普及啓発活
動及びフォローアップを推進していく予定である。また、本倫理綱領及びルール&マナー集は当協議会によるオンラインデータベース「ねっとバンク」(注2)やインターネット上のホームページにも掲載し、利用者からのアクセスを可能にしている。
(注1)「電子ネットワーク協議会」
パソコンネットワークなどの振興を目的に平成4年10月に発足した組織で、事務局
は財団法人ニューメディア開発協会内にある。商用ネット事業者、コンピュータメーカ、通信ソフトハウス、アプリケーション事業者などの法人会員96社、学識経験者などの特別・個人会員18名、公共ネットワークなどに関心を有する協賛自治体52団体から構成されており、会長は関本忠弘(日本電気株式会社会長)である。
(注2)「ねっとバンク」
全国パソコンネット局実態調査の結果に基づき、利用者がネット局情報を検索でき
る無料のオンラインサービスで、PC-VAN、NIFTY-Serve上で利用することができる。アクセス方法は、PC-VANではJ NETBANK、NIFTY-ServeではGO NETBANKで入れる。「ねっとバンク」には、電子ネットワーク協議会からのお知らせ、月例セミナーのご案内、講演記録なども掲載されている。
問い合わせ先
通商産業省 機械情報産業局電子政策課 伊原、井上
電話 03-3501-2964
FAX 03-3580-6403
E-mail itaa2120@miti.go.jp
電子ネットワーク協議会 事務局 山科、月崎
電話 03-3457-0671
FAX 03-3451-9604
E-mail press@nmda.or.jp
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(c)1996 ELECTRONIC NETWORK CONSORTIUM
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