米国・英国・ドイツの情報通信の新しい潮流

通信法改正と競争状況の成立を中心に


1996.12.12


会津 泉

(国際大学GLOCOM/ハイパーネットワーク社会研究所)





欧米の情報通信の状況

1996年の9月下旬から10月上旬にかけて、経団連の情報通信関連企業メンバーを中心とした欧米視察団が組まれ、筆者もその一員として同行の機会を得た。以下、米国、英国、ドイツの状況について、主としてこの視察団による訪問取材を基に考察を加えた。



1. 米国

連邦通信法の改正─本格競争は生まれるか?
米国では、93年に「情報スーパーハイウェー構想」を掲げて誕生したクリントン=ゴア政権が、同年2月に「全米情報基盤(NII)政策」を、9月には「NII行動計画」を策定して、その実現に努めてきた。当初は連邦政府が自ら資金を投じて実際の高度情報インフラを構築するのかと思われたが、すぐに民間企業側から強い反発を受け、実際の施策ではインフラそのものの構築は民間主導で競争的に実現されると明言され、政権はむしろ行政、医療、教育などのアプリケーション分野での情報技術の利用推進に力を入れてきた。

その過程でNIIの最大の眼目の一つとなったのが、1934年に制定されたままだった「連邦通信法」の改正で、足かけ3年かかって96年2月にようやく「96年通信法」が成立し、RBOCsが独占してきた地域市場を含め、長距離、CATV業界などを巻き込んで、電気通信市場に全面競争が実現するとの期待が高まった。

本年8月、連邦通信委員会(FCC)が新通信法の要となる地域通信の相互接続ルールを策定し、長距離通信と市内通信の区分の廃止=全面競争へと向かう道筋を示した。このルールは全文で数百頁にわたるきわめて詳細にわたるもので、長距離・地域などの通信事業者に加え、消費者連盟その他様々な利害関係者の意見を公聴会や文書で集め、公開の議論を重ねた上で裁定された。なお、基本資料はすべてインターネットで公開され、容易に入手できる。

このルールでは、地域通信事業者に相互接続を義務付け、機能別の接続(アンバンドル化)を導入した。これにより、新規参入者は、自前で設備を構築・運用するか、既存事業者の設備の一部のみを借りて利用するか、あるいは既存事業者の設備をそのまま再販するか、三通りの方法のいずれかを選択できることになった。

相互接続交渉の重要な争点となる費用算定方式には「総要素長期増分費用(Total Element Long-Run Incremental Cost=TELRIC)」を採用した。これは既存事業者が主張する「歴史的コストの回収」ではなく、現時点の技術を利用した設備投資を土台とする最小増分コストに「適正利益」と「減価償却」を加えたもので、技術革新を生かしてコストを低く押さえ、なおかつ既存事業者にも新規参入者にも、設備投資のインセンティブを与える方式だという。

しかし、地域事業者はこの相互接続ルールを不服として訴訟を起こし、カンザス州の法廷では10月15日に早くもFCC敗訴の判決が出た。相互接続はそもそも州の裁量範囲に属すもので、連邦政府機関であるFCCの裁定は州の権限を侵害するというのが主要な争点である。現在、最高裁がFCC側の上訴に対して、再審を行なうかどうかを検討している。

しかし、FCCのハント委員長は、早くても98年春まで決着はつかないだろうと悲観的な見通しを述べている。後は、州の公益委員会がFCCのルールを自発的に取り入れない限り、地域における市場開放は実現しない。

こうして、通信法の改正をめぐる審議の際にも明確に利害が対立して激しいロビー活動を展開した地域系と長距離系の事業者は、FCCによる相互接続ルールをめぐっても対立している。当初、新通信法は地域系事業者にやや有利と見られたのだが、地域系は自らが独占してきた縄張りに競争相手が侵入することを少しでも遅らせようと抵抗を続け、地域に全面競争が実現する見込みは、少なくとも当面は大きく後退したといえる。


実際の競争はどこに生まれるのか?
米国の場合、84年のAT&Tの分割+地域・長距離分離の時点で、市内料金は、基本的にはコストに見合った料金へとリバランシングされ、割高な長距離通話からの内部補助は基本的には存在しなくなった。それでも、10年がたって、RBOCsにまともに競争する地域系の新規参入者はほとんど登場しなかった。当初、地域は「自然独占」だという誤った考えが強かったからだ。その後は、地域独占体の市場支配力の強大さがその大きな理由とされた。

しかし、実際には、市内料金の水準が低く、利益を上げるには「規模の利益」を達成するしか道はなく、巨額の投資を回収するまでにかかる長期のサンクコストに耐えるのは、新規事業者にとってあまりにも魅力がないというのが、事業者の本音だったのだろう。

無線ではなく、地上・固定・有線系の設備を競争的に設置することは、アナログ音声電話をサービス対象とする限りは、投資意欲がまったく起きない旧型サービスに過ぎないのだろう。

今回の通信法成立により、AT&TやMCI、GTEなどが、シカゴなど一部地域ですでに独自の市内網の施設を構築・運用し始めているという。しかし、地域の競争が全国的にどこまで拡大するのかは大いに疑問である。相互接続条件さえ整備されれば、自前の設備を全面的に持つよりも、ある程度まで構築してバーゲニングパワーを確保した上で、競争相手と相互接続協定を結んだ方が、経営的なメリットは高いと考えられる。地域的に十分採算がとれる地域や、戦略的に押さえたい地域に新規設備を投資することはあるだろうが、そうでない地域までわざわざリスクの高い投資をするとは考えられない。それより、競争事業者から有利な条件で設備を借りる方が賢明だ。再販も可能である。それが今回の通信法による相互接続実現のメリットだろう。

そうすると、市内に全面的な競争が起きる状態に到達する可能性は、実はかなり低いと考えられる。長距離系の経営戦略も、現実的にはそれを前提にしたものとなるだろう。AT&T分割は、長距離の競争市場を活性化したのと引替えに、市内の地域独占を許した。BTのバランス会長は、米国のAT&T分割は人為的障壁を設けたことで誤りだったと断じている。今回の米国の96年通信法は、地域も含めた「全面競争」を目指したものだが、実際には、地域電話会社と長距離電話会社、CATV会社などの激しいロビー合戦の結果成立した「妥協の産物」である。電話会社同士で本当に真剣勝負の競争が起きるとは考えにくい。

今後の米国市場は、地域系ではRBOCs同士の合併・再統合の動きは強まるだろう。しかし、地上の固定網の新規参入は、CATV陣営を含めて、少なくとも当面は期待できない。むしろ、無線網の発達・技術革新の可能性の方が、需要に応じた漸進的な投資が可能で、しかも短期的な回収が可能であることから、事業として成長の可能性は高い。

市内における本格的な競争は、おそらく根本的な技術革新の登場によって、現在の固定有線方式の通信のもつ経済優位が崩壊するところに発生するのではないだろうか。そしてそれは、音声電話の市場ではなく、インターネットなどのより新規の技術・サービス分野での競争となるだろう。


米国のインターネットをめぐる動向 電話会社とCATV会社の参入
これまではUUNETなど独立系のプロバイダーが中心だった米国のインターネット・プロバイダーの市場に、まず電話会社、続いてCATV会社による参入が始まろうとしている。

長距離系では、MCIがインターネットに積極的な取組み戦略を一貫して打ち出している。同社では2000年には音声電話網とデータ通信(インターネット)網とのトラフィックの比率が逆転すると予測し、インターネット側の設備投資を急いでいる。この一年間で国内の基幹回線の容量を最低でも16倍にするという大胆な投資である。

ただし、MCIでは従来の一律固定料金制から、トラフィック量に応じた従量課金への移管を検討している。インターネット協会の前会長のビント・サーフ同社上級副社長も、「個人的には市場の発展を促進する固定料金制を強く支持するが、同時にコストと価格の関係をより現実的に見る必要がある」と述べている。AT&Tも、3月にインターネットのアクセス・サービスを開始し、同社の長距離電話の顧客には毎月5時間までの利用は無料という大胆な戦略を打ち出すことで、わずか数週間で全米二位のプロバイダーになった。

一方、地域電話会社は、市内通話が定額料金制であるために、ダイヤルアップによるインターネットアクセスのトラフィックが急増し、市内回線の話中が増加するなど、通常の電話サービスに悪影響が出ていると指摘し、従量制料金体系への移行、プロバイダーへのアクセスチャージ課金などの要求を打ち出し、FCCに調査・検討を求めている。ただし、FCCはインターネットの成長を積極的に評価する立場で、ハント委員長はこの問題には慎重な態度をとっている。FCCの「ネットワークの信頼性と相互運用性」評議会が11月1日付で出した「インターネットは電話回線の容量管理への挑戦となる」という報告について、ハント委員長は引続き実際の動向を監視したうえで具体的な対応策が必要かどうか提言するよう求めた。

いずれにしても、インターネット利用の急増に対して、電話会社は加入者線の設備投資を迫られていることは事実だ。ただし、ダイヤルアップアクセスに対しては、総額でも10億ドル程度の投資とみられている。パシフィック・ベルは、ニューヨークのウィンスター社から38ギガHzの無線回線を借り、急増するインターネットと電話利用に年内にも対応する計画を発表した。これ以外では、通常の電話以外の、OCNなどのより本格的なコネクションレス型のネットワーク技術によるインターネット回線の構築・提供に具体的に着手した事業者は、いまのところまだない。

今後、電話会社はADSLなどのいわゆるxSDL技術を採用するのが主流になるとみられている。これに対して、ケーブルモデムや固定無線などの新規技術の可能性も浮上し、どの技術が最も経済的に成功するのかが焦点となっている。


ケーブルモデムの可能性?
CATV事業者はビデオオンディマンドなどの「双方向TV」を事実上断念する一方、インターネット・アクセス事業への参入を計画している。CATVで全米二位のタイムワーナー社は、9月初めにオハイオ州のアクロンとカントンで、初のケーブルによるインターネットサービス「ロード・ランナー」の提供を開始した。当初の顧客数は500と伝えられている。月額約40ドルと、通常のダイヤルアップの二倍の料金だが、高速アクセス(1.5M程度を保証するという)と、タイム社の豊富なコンテンツへのアクセスが売物だという。

一方、全米一位のTCI社もその翌日、こちらはカリフォルニア州のフリーモントで、僅か40世帯を対象に、「@ホーム」という同様のサービスを開始した。

問題はケーブルモデムの実用性能と経済性が実証されていないことだ。利用者数が少ない「実験」なら問題はないが、同一エリアで数百ユーザーを越えれば、アクセス速度はかなり低下すると見られている。それを避けるには、コストのかかる設備投資が必要となる。また、自社のサービス地域外へのアクセスについては、通常の専用線接続となるから、その分の速度も保証されない。


ODNこそが問題だ
繰返しになるが、音声電話市場はもはや問題ではない。インターネットに代表される、コンピューター同士を結ぶ新しいネットワークをできるだけ早期に、低価格で、かつ十分な容量をもったものとして実現することが、21世紀ディジタル革命の核心課題だ。そのための技術として、もっとも有望なものは何なのか?

アナログ技術を前提にした既存の電話ネットワークの未来は、論じても空しい。起こすべき競争は「電話の競争」ではない。まさにインターネット型の、我々の用語でいう「オープン・ディジタル・ネットワーク(ODN)」の育成とそのための競争と協動が、本質的に議論されるべき問題だ。そして、その際のボトルネックは「地域の独占」ではなく、利用者にとっての「安く速い回線の不在」である。

今回の通信法をめぐる議論には、こうした視点はほとんど存在しなかった。93年から、議会での審議がもたついている間に急成長したインターネットについて、実質問題としてはなんら具体的な条項を盛り込まれていない。インターネット電話については、すでに中小の電話事業者からは規制すべきだとの要求が出ているが、FCCはハント委員長以下、これを却下する姿勢をとり、インターネットの成長も競争の現われとして歓迎している。

FCCは全体として「テクノロジー・ニュートラル」の姿勢を保持し、有線・無線、固定・移動・衛星などのいずれの技術に対しても等距離の政策をとろうとしている。急激な変化が続く限り「未来は予測不可能」だからだ。

それはその限りでは正しいが、いまやインターネットの普及については、単なる「ニュートラル」以上のより積極的な戦略が必要ではないだろうか。インターネットそのものが、ある意味では伝送レベルまでの技術については「中立」で、かつオープンである。この点をどう発展させていくかは、企業の戦略課題であると同時に、政府の政策課題としても重要だ。この点、米国政府は、選挙戦中に「インターネットII」構想を打出し、未来の高速回線技術への研究開発に積極的に乗り出そうとしていることが注目される。

なおニューヨークで経団連視察団が訪問したIBM本社のガースナー会長は、インターネットを中心としたコンピューター・ネットワークこそが今後の情報通信の世界の主導勢力であると終始力説した。彼は情報と通信の「融合」という概念は決定的な間違いで、すべてはコンピューター技術が決定すると明言した。しかし、同社でインターネットのデモとして見せられたもののほとんどが、WWWやVRMLなど、IBMの社外で開発された技術によるものだったのが印象的だった。



2. 英国およびドイツの状況

英国─複占は失敗だった
英国では、10年前の「BT民営化」=「BTとマーキュリーによる複占(デュオポリー」は失敗だったとの反省から、OFTELが徹底した自由化、外資への市場開放などの規制緩和策を中心とした競争促進政策をとっている。しかも、それをEU市場全域に拡げようとしている。EU域内自由化の「尖兵」といってもよいだろう。

7年間の「複占」の下でも、BTの市内シェアは90%台を確保してきた。OFTELは、BTにかなり厳しい規制を加えようとする一方、分割はまったく考えていない。OFTELのクルックシャンク長官は、複占は誤りだが、BTを分割しなかったのは正しかったと明言している。むしろ、規制緩和して新規参入のインセンティブを高め、外国資本の参入も大いに歓迎しようとしている。

OFTELは、過去の英国は、将来予測に基づいた微細な規制を行なうことで変化への対応が遅れるという誤りを犯したと考え、将来の予測は不可能で、変化に柔軟に対応でき、実質的な競争を促進することを重視している。BTはむしろ微細な規則を好むが、OFTELはなるべく詳細な規制は避けて、一般原理に止め、変化への対応促進を狙うという。

相互接続については、BTとのコスト定義だけが残る課題で、OFTELはスタティックな会計基準によるコストではなく、よりダイナミックで現実のビジネスの動きを反映した、(その意味での)経済学的コストの採用を主張している。

OFTELは、規制緩和プログラムとして、97年に相互接続のルール化と価格規制の緩和、2000年までに価格規制の撤廃を目標としている。競争が促進されれば、2005年頃までに残る規制は、ユニバーサルサービス、番号管理、相互接続・相互運用性の確保くらいになるだろうとしている。

国内で本格的な競争に晒されようとしているBTは、国内市場の優位を保持しつつ、ヨーロッパ、北米、アジア太平洋の国際市場に進出する戦略である。すでに報道されている通り、北米はMCIを買収し、その手に委ねる戦略だ。国際市場では、当初は、基本的にはグローバルなオペレーションを保持している多国籍企業の業務利用分野を主なターゲットとして想定している。この戦略の展開にあたっては、他国キャリアとの積極提携を考えている。日本のNTTにも、その一環として期待を寄せているようだ。

マルチメディア市場について、BTはサービス提供とネットワーク提供を主なターゲットとしている。ただし、ネットワークについては需要(必要となるバンド幅)不確実として、当面は既存技術(ISDN、衛星、ADSL、幹線の光化)の延長線上での投資に限定するようだ。OCNのような、インターネットに対応した新ネットワークという構想はいまのところ存在しない。

英国の産業貿易省(DTI)は、日本型の産業政策は否定し、ユーザーの利益と英国経済全体の強化を目指している。規制はあくまで競争促進の手段として位置付け、競争が実現されれば規制は縮小させる。BTへのプライスキャップもいずれ廃止されると考えている。

こうしてアングロサクソン型の競争哲学に支えられ、既存権益を一定限度は認めつつも、厳しい規則によって国内外に同時に競争を促進するというのが、英国の基本方針といえよう。


ドイツ─競争導入と郵電省の「解体」
ドイツは「一周以上遅れのゲーム」を始めたといえる。長年公営・独占だったブンデスポスト・テレコムを、まず郵便と通信を分離して「ドイツ・テレコム(DT)」を発足させ、95年1月にようやく株式会社になった。96年7月に新電気通信法が成立、98年1月からのEU市場全体の通信自由化と歩調を合わせて、「完全自由化」を実施する。この11月には、ドイツ、米国、東京の世界3カ所で株の上場が行なわれた。

ドイツテレコムの独占を終了させ、通信市場の開放を実現する法律制定を手掛けた連邦逓信委員会のベルンセン委員長は、経団連視察団に対して以下のように語った。

「ドイツでは1990年までは、テレコム政策は停滞していた。日本、英国、米国の状況をみていると、ドイツよりは格段に進歩していた。90年の郵便の民営化をきかっけに、変わってきた。トップのレベルを確保するためには、まず競争を確保することと、他のパートナーとの提携が必要だ。国際レベルでは、DT、FT、スプリントの提携がある。外国企業に市場を開放することも目標としている。国民経済的考え方からみると、すべての人がサービスが享受できることが原則だ。

新通信法の目標は、ドイツテレコムの電話の独占をなくすことで、97年12月31日までに実現する。目標はドイツに通信のオープンマーケットをつくり、自由競争を実現することだ。DTの独占から、いかにして競争を実現するかポイントだ。

ただオープンにすれば問題がすべて解決するというわけではない。英国では自由化後10年たっても、BTが90%のシェアで、競争は簡単に実現はできない。そのため、中立的な委員会をつくることになった。ライセンスの提供も自由になり、前提条件さえ満たせば、だれにも制限なく供与するのだ。

外国のキャリアなどの資本参加は、98年には許可するが、その場合にネットワークのキャパシティをどうするか、光ファイバーをどう確保できるかが問題だ。RWE(電力会社)とBT、マンネスマンとAT&Tなどの合弁も当然かと思う。

マルチメディアの、医療、教育、商取引などの分野での利用は、通信の価格を下げないと発達しない。アメリカの状況では、大容量のデータ伝送からインターネットへと方向が変わっているようだ。インターネットの利点は、提供するサービスが非常に幅広く、活用する側が、幅広いアプリケーションを享受できる点だ。ドイツでは、オンラインサービスを活用する人が急速に拡大にしている。まず必要なのは、音声通信の価格を格段に下げることだ。これは独占をなくすことが前提だ。これからはインターネットが前面に出てくるだろう。」

一方、この自由化で競争に晒されることになったDTは、ソニー社長からの転進で話題となったゾマー社長に率いられ、積極的な経営展開を計っている。以下は、経団連視察団に対するゾマーDT社長の発言の要旨である。

「いま状況がエキサイティングなのは、次の4つのファクターがあるからだ。
1)ドイツ市場が急速に発達・変化していること。我々はそれを支持、推進している。2)過去の巨大事業者が国内市場を独占していた時代と違って、市場がグローバルになってきた。これは歓迎したい。ドイツ市場にも競争が入り、完全に自由化され、おそらく世界でももっとも厳しい競争市場になるだろう。国内市場のみならず、グローバルビレッジにおけるホームの顧客を満足させる必要がある。日本を含むアジアがもっとも期待できる。3)技術の急速な変化が大きい。インターネットはそのなかの一例に過ぎない。4)48日後に控えている我々の株式公開におおいに期待したい。」

強大な支配的事業者であるDTに対しては、厳しい規制が課せられることになり、DTからはその緩和を求める声が絶えないという。しかし、DTを分離・分割するという案はまったく検討されておらず、国際競争力を付けさせるためには、国内でも厳しい競争に晒すことで鍛えることが望ましいというのが、ドイツ政府・議会の基本政策だ。この基本姿勢は英国政府のBTに対する政策とほぼ変わらない。


英・独の状況への考察 分割より競争による開かれた市場形成
英国では、約7年続いた「複占」の失敗の反省に基づき、独立規制機関であるOFTELは、現在より一層の自由化の推進に着手している。相互接続などでBTにより厳しい規制を課しつつ、EUの通信市場の自由化、国内市場の外資への開放などを積極的に推進し、国際的に開かれた市場を作りだそうというのだ。BTの「分割」はまったく検討されていない。非対称規制にもかかわらず有効な競争を実現したとはいえないC&Wに対しても、規制当局はこれを育成・保護しようという姿勢はほとんど見られない。

英、独のいずれの政府・規制機関も、自国の通信事業者に対して本格的な国際競争力を実現するためには、国内市場で厳しく規制し、徹底した競争に晒すことがもっとも有効だという点で、一致した意見を示している。既存事業者も、規制の具体的適用については既得の利害を守るべく抵抗を示すものの、一般論としてはこれを認めている。

その一方で、長距離と地域、国際と国内といった、「距離」による区分はむしろ人為的なものとして避け、あらゆる領域で直接・全面的な競争を実現するとの考えが支配的だ。光ファイバーによる伝送容量の増大、ディジタル交換機による能率向上など、技術革新の成果が、こうした「距離」依存性を大幅に低下させたと見るべきだろう。

この点では、「分割か規制緩和か」、「分割は国際競争力を弱体化させる」「強権発動か自由か」といった依然として機械的な二者択一、形式論的な議論の構図が支配的な日本とは対照的な状況だ。

こうして、米国も含めたこの三国では、立ち場の異なる、ないし対立する当事者同士の間でも、一定の合意があると考えられる。いずれも、政府の政策立案機関と、規制担当機関とを分離している点も共通する。

一方日本では、規制を担当する独立機関は存在せず、郵政省とNTT、NTTとNCCとの間で、およそ論理的な次元とはいえない、感情レベルでの対立が続いてきた。不毛な対立に終止符を打ち、日本でも、速やかに理性的な合意が成立することがきわめて重要と思われる。なお、欧州では、欧州連合のいわゆる「バンゲマンレポート」を受け、「情報社会」実現のパイロット・プロジェクトが始まりつつある。「バンゲマン・チャレンジ」と呼ばれるこのプロジェクトは、EU加盟国の25の都市がそれぞれ独自に推進するもので、国よりも都市単位での情報化推進プログラムを特徴とする。なお、そのなかで、スェーデンのストックホルム市が、独自に光ファイバー網の構築に着手し、通信会社に設備を貸与するという、いわゆるダークファイバー事業を開始していることは注目に値する。




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