インターネットの国際管理組織ICANN

SO(Support Organization)活動への参加・支援のお願い



1999年3月



主旨:

 インターネットのドメイン名、IPアドレスなどを管理する新しい国際組織として98年10月にICANNが創設され、以来その組織規約と具体的な運用方針の検討がグローバルに行われてきました。この3月のシンガポールでのICANNの諸会議を経て、ICANNの構成・支持組織(Support Organization)として、DNSO、ASO、PSOという3つの組織が新しく創設されようとしています。このまま順調に進めば、5月末にベルリンで開催されるICANNの役員会とそれに先立つSO別の会議で、主な構成、規約、役員などが選出される運びです。このSOは「諮問組織(Advisory Bodies)と規定され、最終決定はICANNの役員会が下すことになっていますが、実質的には大きな影響力をもつ組織となります。
 これらは国際的な非営利組織と規定され、原則としてインターネットのグローバルな特質を反映し、世界中の地域からバランスのとれた組織構成にすることで合意されています。今後の情報社会の中心となるインターネットの分野で、いわばこれまでの電気通信におけるITU(国際電気通信連合)に相当する、新たな国際機関を、民間主導で作り出す重要な試みといえます。

 今後、インターネットの商用利用の拡大、とくに電子商取引の拡大などに伴い、ICANNとその支持組織であるSOが決定する体制、仕組みは、グローバルなインターネット利用のあり方に決定的な影響をもつものと思われます。各SOのなかでもとりわけDNSOは、登録商標との関係をはじめ、新しいドメイン名の決定方式など、通常の企業活動にも大きく影響する事項を扱う組織として、インターネット関連企業はもとより、一般企業のビジネスにも大きな影響を与えることは間違いありません。
 しかしながら、現状では、インターネット資源が集中している米国と、これに続く欧州諸国からの参加がきわめて盛んであるのに対して、アジアをはじめ、途上国など他の地域からの参加は非常に少ない状況です。

 ICANN本体は、役員構成に地域バランスを保つことが規定され、日本から村井純慶應大学教授が選出されるなど、アジアからの参加もそれなりに確保されてきました。しかし、SOについては、各種会議への参加者がアジア全体からでもせいぜい1、2名あるかどうかという状況が続き、このままではアジアの代表は相対的に少なくなる可能性が多々あります(その分、オーストラリアからの代表が増えることが予想されます)。
 そこで、日本、韓国、シンガポールなど、アジアのインターネット関係者の間では、なんとかしてアジアからの参加・関与を増やす方針が合意され、そのための努力が続けられています。しかし、ICANNとその支持組織には世界中から非常に広範囲の利害関係者が参加することになっており、これまでのようなインターネット関係者だけの活動では、量的にも質的にも、時間的にも資金的にも、決定的に不十分な状況となっています。

 日本の産業界、企業関係者の皆様には、ぜひともこの問題に関心をお持ちいただき、下部組織への参加をはじめ、役員・評議員への立候補などに積極的に関与・ご支援いただけるよう訴える次第です。

有 志:
 村井 純(WIDEプロジェクト代表・JPNIC理事長)
 後藤滋樹(早稲田大学)
 高橋 徹(日本インターネット協会会長)
 会津 泉(アジア太平洋インターネット協会事務局長)

・参考: ICANN規約案: <http://www.icann.org/dnsoupdate.html



 現在のICANNの役員会は「initial board」と呼ばれ、組織創設までの暫定役員会と規定され、本格的な理事会は、現在討議中のプロセスを経て選出されることになっています。正規のICANN理事会は、前述の3つの支持組織(DNSO、ASO、PSO)から各3名計9名、別に定める一般会員(At Large Member)から9名、それに別に選任されるCEO1名、計19名で構成されることになっています。

・ 地域バランス
 ICANNの役員構成では、地域バランスをとることが定められ、特定地域が過半数を占めることがないようになっています。「地域」はICANN規約で別に定義され、オーストラリア・ニュージーランドを含むアジア太平洋が一地域となっています。実際には、アジアから代表が出せない場合にはオーストラリアからの選出が増える可能性が高いと思われます。

・SOの構成
 ICANN役員選出のプロセスの中でもとくに重要なのが、各支持組織(SO)を構成する「constituency(支持母体)」と呼ばれる構成員です。DNSOについては、次のような案が出されています。(<http://www.icann.org/dnsoupdate.html>)
 DNSOは、総会を開き、そこでの投票によって、それぞれの支持母体から代表を各3名選出し、合計21名による「Names Council」(ネーム評議会)を構成します。このNames Councilが実質上の管理運用規則などを提案・制定する機能を果たします。
 なお、この支持母体からの代表3名は、やはりそれぞれ別の地域から選出されなければならないことになっています。

DNSOの初期の支持母体案:
1. 国別TLDの割当組織(例:日本ではJPNIC)
2. 営利企業組織(Commercial and Business Entities) (ICC国際商工会議所なども入る)
3. gTLDの割当組織
4. インターネットのプロバイダ、通信事業者
5. 非営利のドメイン名保有者
6. ドメイン名の受付をする組織(割当と受付組織は分離される予定)
7. トレードマーク、知的所有権の関係者 (INTA=国際商標協会など)

 ここで、従来のインターネット関係者ではカバーできないのが、2. 企業組織、5.非営利のドメイン名保有者7. トレードマーク、知的所有権などの関係者です。
 なお会合における討議内容は、技術問題に加えて法律関係の議論が多く、法務部門の方が適任であるといえます。実際に米国、欧州からの出席者は、法律の専門家が多数を占めています。
 現在は、ICANNそのものの会員制度などの制定に加えて、前述したように、各支持組織(SO)の構成について、それぞれの利害関係者を中心とする検討、提案が続き、これを現在のICANNの役員会が採択して組織が形成される方向になっています。

 5月末にベルリンで開かれる予定DNSOの総会と、これに続くICANNのオープン会議と役員会によって大勢は決定されるものとみられます。ASOについては4月下旬または5月初めに米国(マイアミ?)で準備会合が開かれる予定です。



(参 考)これまでの主な経緯:

 インターネットのグローバルな運用・利用に不可欠なIPアドレス、ドメイン名などの付与は、APRAネットの昔から、IANA (Internet Assigned Numbers Authority) という、米国政府が支援するプロジェクトが実施してきました。たとえば、日本では「.jp」以下のドメイン名を社団法人JPNICが割当てていますが、そもそも 「jp」が日本を指すことを決めたのはIANAであり、JPNICも広い意味で、IANAの管理・運用体制のもとで活動を行ってきました。

 ところが、インターネットの商用利用の拡大に伴い、米国中心に使われてきた「.com」というドメイン名が既存の登録商標と衝突する等の紛争が頻発し、また「.com」や「.org」などのドメイン名の割当体制が、米国政府(NSF)からNSI (Network Solutions Inc)社に委託されているのは不当な独占的であり、開放・自由競争を主張する要求が起こってきました。

 1996年頃から、ISOC(インターネット協会)が呼びかけ、国際的にインターネットの関係者が広く集まり、新しい管理体制への移行を提案し、「gtld-mou」という形でいったんは合意がまとまりかけました。(gtld = generic top level domain, mou = memorundam of understanding )(参考:http://www.gtld-mou.org
 しかし、この「gtld-mou」体制を認めない人々が米国政府に働きかけたこともあり、米国政府は、97年7月、この問題を正式に政策課題として取り上げ、98年1月、「Green Paper」による新方針を発表し、その後各国から「米国中心すぎる」との批判を受けたために、同年6月の「White Paper」によって、実質的には「gtld-mou」にかなり近寄った新管理方式を提案しました。
 これを受け、98年7月から10月にかけて、米国政府をはじめ各国のインターネット関係者などによる各種協議が続き、その結果、従来のIANAの業務を継承するICANN(Internet Corporation for Assigned Names and Numbers)という国際非営利組織が発足しました。
(参考:ICANN http://www.icann.org

 米国政府(商務省)はこのICANNをIANAの後継団体として一応認知しましたが、なお会員制組織にすることなどの条件を付け、99年10月までにICANNが正式な体制を作り上げることを要求しています。
 これを受けて、ICANNでは、役員会をはじめ、会員制度諮問委員会、政府諮問委員会、ルートサーバーシステム諮問委員会などの各種委員会を設けて、正式の組織体制、運用方針などの検討を続けています。日本からは役員会に村井純慶應大学教授が選出され、ルートサーバーシステム諮問委員会の委員長を勤めるほか、会員制諮問委員会には会津泉アジア太平洋インターネット協会事務局長が選出・参加しています。




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