アジア発世界標準への期待『日経ネットビジネス』連載 アジアネットワーク便り(2000年4月号) (アジアネットワーク研究所/クアラルンプール)
NTTドコモのiモードは、これまでとは一味違う新しい市場を創出したとして、世界中の注目を集めた。ただし世界標準となるかは分からない。モバイルインターネットの世界標準案ではWAPという規格が先行している。iモードは日本の独自仕様で、見切り発車的にスタートした。通常のHTMLと互換性が高いコンパクトHTMLを採用したことで、コンテンツを簡単に提供できるなどの優れた点は多い。だからこそ短期間で普及した。しかし世界中で、iモードが使える保証はない。 日本の携帯電話のPDC方式は日本でしか使えない。アジアとヨーロッパのほとんどの国では同じGSM方式が使えるのとはずいぶん違う。島国日本にいると分からないが、アジアに出てみると、その便利さ、規模の経済による料金の安さを実感できる。 香港の携帯電話会社のハチソン社が、iモードを提供するという。NTTドコモが資本参加するのとセットだ。これをきっかけにiモードがアジア発の本格サービスとして世界に普及してほしいが、そのためには細部へのこだわりや「面子」を捨て、本当に普遍性のあるものを育てる努力が必要だろう。 もう1つ、Webやメールのアドレスの基本となるドメインネームシステム(DNS)について、アジアから注目すべきサービスが始まった。iDNSといって、シンガポールのベンチャー企業が開発したものだが、もとはAPNG(アジア・パシフィック・ネットワーキング・グループ)という、日本を含むアジア各国のインターネット・コミュニティーのリーダーによる研究プロジェクトとしてスタートしたものだ。 iDNSは、中国語、韓国語、タイ語など、それぞれの文字でドメインネームを使えるようにする。英語が苦手でも、アドレスを簡単に覚えられる。実際のサービスが昨年末に台湾で、今年になって香港、タイ、インドの各国で始まり、中国語、タイ語、タミル語などが使えるようになった。今後はアジアに限らず世界中への普及が期待される。 インターネット上の技術はオープンに開発され普及する。「オープン」とは、基本仕様が公開され、標準化決定のプロセスに意思さえあれば誰でも参加できる仕組みとなっていることだ。IETF(インターネット・エンジニアリング・タスクフォース)という、参加自由な活動がその仕組みを支えている。iDNSはIETFでの議論にも積極参加し、世界のインターネットコミュニティーのコンセンサスを得る努力をしている。 反対に気になるのが、日本の新しいBSデジタル放送の標準案だ。BMLというインターネットとの互換性がない規格案が制定されたという。これが採用されると日本の放送局は世界の流れから孤立する可能性がある。よく「グローバルスタンダードは米国の押し付けだ」というが、ネットで国境を越えるコミュニケーションが自由に低コストでできる時代に、自らが世界の標準に採用されるだけの普遍性をもつ努力をせずに生き残ることはできない。世界のモバイルの流れやBMLの問題点は「世界情報通信サミット」で、当事者を交えて議論されている。一度ご覧いただきたい。
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