マレーシアの電子商取引の行方『日経マルチメディア』連載 アジアネットワーク便り(99年3月号) (アジアネットワーク研究所/クアラルンプール)
まず、電子商取引に不可欠な認証機関(CA)だが、政府が強く推進するマルチメ ディア・スーパーコリドール(MSC)計画の柱である「サイバー法」のうち、「デジタル署名法」が98年10月に施行され、これを受けて国営郵便局が政府系の電子システ ム研究所(MIMOS)他1社と合弁会社を設立し、マルチメディア省(正式にはエネル ギー・マルチメディア・通信省)から認証機関(CA局)の認定第一号となった。企業 や個人を対象とする認証サービスが99年1月から開始された。 一方マレーシア中央銀行は取引プロトコルにSETの採用を決定し、98年11月から 3ヵ月、民間最大手の銀行であるメイバンクとRHBバンクに民間企業2社が加わって 電子商取引のパイロット実験が実施された。まずディスケットやCD-ROMでの「電子 財布」を発行し、将来は銀行のATMでも使えるプリペイドカードやインターネットからのダウンロードも可能にするという。中央銀行は、実験後、99年年頭から本格システムの稼働を予定していたが、今年中頃にズレこむ見込みだ。業界関係者の間には、 年内開始さえ疑問視する声もある。SETへの統一に抵抗があるからだ。 中央銀行側はSETの採用でマレーシア製品をグローバルが販売できるというが、 SET以外のプロトコルを排除するのはマレーシアにとって不利だという見方もある。 SETは初期投資が高くSSLの方が安いとの声もある。それぞれ一長一短があり、本 来民間の市場に委せるべき方式の選定を中央銀行が強引に行うことへの反発があ る。 これとは別に、IBMでは、中小企業を主対象に、自前の専用サーバーがなくても決 済できる代行サービスを開始した。これまでマレーシアでは、本人の実際の署名がな いクレジットカードは銀行が認めないために、電子取引への利用は不可能だった。そ れが、この新しい決済システムを提供する事業者(CSP)の登場で変わろうとしている。このシステムでは、暗号方式としてSSLを採用している。 CSPは銀行との間に専用線をもち、販売店はCSPと契約を結ぶ。お客からCSPに送 られる取引情報が銀行側の決済サーバー上の情報と一致すれば決済は承認される。販売店側の初期費用は約7000円、毎月の利用料が2400円だ。さらに、取引一件あた りの手数料が、取引金額5000円以下で約270円、5000円以上だと5%プラス360円かかる。銀行はシティバンクがあたる。このシステムを利用して、オンラインでのチケット販売が始まった。 政府系電話会社のテレコムマレーシア(TM)も、昨年秋にカナダ企業との合弁会社を設立、マレーシアおよび周辺諸国での電子商取引関連事業に着手した。この会社ではTMの通信ネットワークを利用して、インターネットでの決済システム、銀行や企業を対象としてキャッシュカードやクレジットカード用のシステムとサービスを行う予定だという。こうして政府主導で環境は徐々に整いつつあるが、民間側の反応は鈍く、多くの企業は様子見状態を出ていない。
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