爆発する中国のインターネット



『日経ネットビジネス』連載 アジアネットワーク便り(99年7月号)



会津 泉

(アジアネットワーク研究所/クアラルンプール)



 中国のインターネットは劇的な伸びを見せ始めている。このほど北京で開催され た第2回中国インターネット会議・展示会というイベントには、連日1万人を越える 人々が詰めかけ、たいへんな賑わいだった。
 この会議は昨年の行政改革で生まれた情報産業省(信息産業部)が主催し、北 京インターネット研究所が運営したもので、中国政府が全国にインターネットを積 極的に推進している姿勢を強く印象付けるた。折しもユーゴスラビアでのNATOの 中国大使館誤爆事件の直後で、「インターネットの父」として有名なビント・サーフ 氏など、米国から招待された講演者数名が直前にキャンセルする不測の事態も あったが、全体の盛り上がりには影響なく、会議にも数百名が参加し、充実して いた。
 冒頭、Wu Jichuan情報産業大臣が基調講演を行い、「インターネット の発展は21世紀の中国の発展にとって戦略的に重要な意義をもち、市場におけ る公平な競争によって業界を育成する」と述べた。日本からも村井純慶應大学教 授、高橋徹日本インターネット協会会長以下、JPNIC、ワイドプロジェクト、NTT、 KDD、富士通、日立などの代表が講演を行なった。私も飛び込みでインターネット の2000年問題について発表した。
 技術面では「IP」が花盛りだった。もとは「インターネット・プロトコル」を意味 する
用語だが、最近は基幹回線をIP中心にするという通信の世界の新潮流全体を表 す言葉となり、光ファイバーにDWDM(高密度波長多重伝送装置)を組み合わせ、 ATMなど従来の電話中心型のネットワークから大容量データ通信によるインター ネット型のネットへと転換するというもので、アルカテルやルーセントといった欧米 系のメーカーがこの新技術の売り込みに熱心なのが目立った。
 中国のインターネット接続事業は1995年に条件付きで開放され、多数の新規企 業が許可されたが、実態は国営電話会社チャイナテレコムによるチャイナネット が圧倒的なシェアをもってきた。しかし、WTO加盟をめざす国の方針で、状況は急 速に変わりつつある。通信事業そのものが、これまでは参入できなかった外国資 本の受け入れを決め、プロバイダー事業も、国営鉄道が科学院の学術ネットと組 んで、広東を拠点に新しいサービスを展開するなど、競争が促進されている。ケー ブルモデムやADSLによる高速アクセスの事業化も各地で急ピッチで動き出した。

 利用者は急速な拡大をみせている。1997年末に推定60万人だったのが、98年 末は210万人と、一年間で3倍以上に増えたという。この勢いが続けば、今年中に 600万人、来年にはなんと2000万人と、総数で日本に並ぶ勢いだ。もちろん人口が 日本の10倍だから、人口あたりの普及率では低いが、経済水準全体を考えればこ の勢いは驚異だ。ある調査によれば、未利用者の7割が、今後はインターネットを 利用したいと回答したという。
 需要の急成長に対して、サービスの質が対応できていない。料金の高さと中国語 による情報コンテンツの不足への不満が強い。いずれもチャイナテレコムが専用線 を独占しているのが原因だと指摘されている。つい最近までの日本とよく似た状況 だ。こうした批判に政府も料金見直しに踏切り、3月にダイヤルアップ料金を半額、 米ドル相当で1時間50セント(月60時間まで)に引き下げた。
 政府は当初インターネット経由での海外からの反体制的情報の流入を強く警戒し ていたが、欧米から科学技術情報を摂取し、情報産業の育成を図ることの重要性 を無視できなくなり、97年からは積極的にインターネットの導入を図る政策に転換し た。98年に中央省庁の統合・再編成が行われ、情報通信分野を管轄する情報産 業省が発足し、一貫した政策の推進が可能となったことも大きい。日本が相変わら ず通産省と郵政省に分かれているのとは好対照だ。
 政府各省庁もウェブによる情報発信を推進するよう号令がかかり、外務省、海外 貿易経済協力省、国家科学技術委員会、国営新華社などがインターネット上の情 報発信を開始している。今年中に全省庁の60%、2000年中には80%がインターネット で情報発信を行うと計画だという。
 電子商取引も動き始めているようだ。ただし、オンラインモールは出足は伸び悩ん だ。たとえば、上海医薬商店のサイトは、売上高が年間で50万円にも満たず、開店 時に大きく報道されたオンラインのデパートは、売上げ不振で6カ月で閉店したという。 一方、最近オープンした北京の大型書店のネットでの書籍販売は好調で、1日のアク セス数は30万回、1カ月の売上高は100万円を越えたという。


中国のインターネットの利用者数 (「人民郵電」新聞より)

(万人)

     94 95 96 97 98(年)

■今月のおすすめウェブ

中国インターネット会議公式サイト http://www.conference.org.cn

北京インターネット研究所 http://newsnet.asia.ne.jp

チャイナテレコム http://www.chinatelecom.com.cn

中国政府公式ニュースサイト http://www.china.org.cn

香港発 中国ニュース http://www.chinanews.com





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