名前とアドレスと?『日経ネットビジネス』連載 アジアネットワーク便り(99年8月号) (アジアネットワーク研究所/クアラルンプール)
国別ドメインは、各国のNICが管理・割当しているが、.comや.orgなどのいわゆ る「gTDL」(汎用トップレベルドメイン)は、これまでは米国政府が「委託研究」と いう形で資金を出し、南カリフォルニア大学の研究機関とワシントンの民間企業 NSI社が管理・運用を行ってきた。しかし、米国政府はこの業務の「民営化」を決 定し、同時にNSI社による独占体制から競争に移管しようとしている。 世界中のインターネット関係者にとって、ここ数年もっともホットで悩ましい問題 が、このドメインネームの管理運用を中心とする「インターネット・ガバナンス」だ。 昨98年秋、国際的な非営利法人ICANN (Internet Corporation for Assigned Names and Numbers)が暫定発足し、グローバルなコンセンサスづくりの努力が 続いている。私自身ICANNを会員制組織とするための委員会MAC (Membership Advisory Committee) の一員に選ばれるなど、アジアからの発言を行ってきた。 ソニーやトヨタなどの世界的なブランドが、サイバースペースでそのまま通用す る保証はない。ベンチャー企業が成功して世界市場に出ようとしたときに、その ドメイン名が既存の大企業のそれと類似していれば使えなくなることもありえる。 そこで、新しいルールづくりをめぐって、様々な勢力がグローバルにより多数の 支持を取り付けようという競争を続けている。サイバースペースにおける最初の 本格的な「智のゲーム」の展開、言い換えれば、サイバースペースの上での新し い領地(ドメイン)争いが始まっているのだ 。 ところが、日本を含むアジア諸国の大半は、無関心か参加するための資金と 時間の余裕がないかだ。5月がベルリン、8月はチリのサンチアゴ、秋はアメリ カ西海岸と、3カ月毎に地球の各地を巡回して開かれる会議と、様々な電話会 議やメーリングリスト上での議論に積極参加しないと発言が通らないから、負担 は重い。 欧米企業は、国際商工会議所(ICC)、米国情報産業協会(IATA)、国際商標 協会(ITA)などの業界団体が専門弁護士を雇い、積極的に主張を通し、交渉に 力を注いでいる。IBM、AT&T、マイクロソフトなどがその中心にいる。ヨーロッパ も、EU政府をはじめ、業界団体が強い関心をもって参加している。 一方、日本企業の存在は限りなくゼロに近い。何もしなければ既得権さえ失わ れかねないが、危機感はほとんどない。不況対策に忙しいのか、新興分野への 感度が鈍いのか。先日経団連に参加要請に行ったのだが、いまのところ具体的 な反応は聞こえてこない。アメリカとは違って、日本にはインターネットを自社の ビジネスの根幹にかかわる死活の場だと考える企業がほとんどないからだろう。 ここまでの流れに対して、米国ないし欧米中心主義だという批判が強かった。 その分、日本に対してアジアのインターネット関係者からは期待されているのに。 日本政府もやっと会議に出席するようにはなったが、存在感がない。たとえばア ジアの主張をまとめ、発言しようという意識はまるでないようだ。 企業も政府も、危機感がない、関心がない、人材が足りない。とぼやきつつ、 8月はチリに飛ぶのです。途上国側の主張を通すために。 ■今月のおすすめウェブ ICANN http://cyber.law.harvard.edu/ 国際知的所有権機構(WIPO) http://www.wipo.org 日本ネットワークインフォメーションセンター(JPNIC) http://www.nic.ad.jp アジアネットワーク研究所(ANR) http://www.anr.org
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