インターネットY2K問題経過とご支援のお願いアジア太平洋インターネット協会(APIA)Y2Kタスクフォース 事務局長 会津 泉 Email:izumi@anr.org 1999年5月 1 インターネットにも、Y2K問題が存在する いわゆるコンピューター2000年問題(Y2K)は、インターネットも例外ではない。インターネットの円滑な運用を確保するためには、接続事業者を中心に、電話会社、情報発信者、電子商取引のサービス提供者などの事業者と、企業利用者を中心とする利用者が、ルーター、サーバーをはじめ、パソコン、スイッチ、コンセントレーター、ハブなど、ネットワークを構成するあらゆる機器と、それらが使用しているOS、アプリケーションなどのソフトウェア全般について、2000年対策を確実に実施することが必須である。電源、空調、ビル管理なども点検が必要である。 すなわち、設備・機器の評価からソフトウェアの修復、試験、危機対応計画の立案、情報開示に至るまで、他の分野と同様の手法が広く、実施されなければならない。 同時に、多数のネットワークの相互接続から成り立っているインターネット固有の問題として、これらの相互接続を支えるエクスチェンジポイントやネームサーバーなどについて、関係者が協調してY2K対応を進める必要がある。また、こうした取組状況について広く周知する情報開示も重要である。 2 世界的に対策が遅れている しかし、ことインターネットに限って、2000年問題の社会的重要性についての認識が浅く、世界的に取組みが遅れてきた。その主な理由としては、以下があげられる。 1 インターネット事業者の間に社会インフラの重要な一部を担っている責任意識が稀薄 2 インターネットは技術革新のペースが急で競争が激しく、事業者の資源に余裕がない 3 インターネットは歴史が浅く、業界団体も未発達で、統一的な組織が存在しない 4 インターネットの技術関係者の間に「大した問題ではない」との認識が強かった 5 インターネットにおけるY2K問題について、世界的に的確な情報が不足している 6 各国政府にインターネットにY2K問題が存在するという認識がなく、他のインフラ事業者と同等の働きかけは行ってこなかった。たとえば米国政府(FCC、商務省)は「インターネットは規制せず」という政策を重視し、Y2K問題では業界に接触していない 3 業界としての取組み 事態を憂慮した米国の一部の業界団体(CIXなど)、アジア太平洋インターネット協会らが、問題の重大性を認識し、インターネットY2Kキャンペーン(www.Y2k.org)を開始し、本年2月米国ワシントンで、日米の政府関係者、事業者を交えた非公式会合を開催するなど、ようやく取り組みが始まったところである。 アジアでは、3月にシンガポールで開催されたARICOT会議、同じく宮崎で開催されたAPEC TEL WGなどの機会に、インターネットのY2K問題をテーマとする臨時会合が開催された。 その結果、4月22-23日にシンガポールで開催されたAPECY2Kシンポジウムで、APIAが発表を行い、27日には、日本インターネット協会が「緊急シンポジウム」を東京で開催した。しかし、依然として散発的な活動に終始し、米国に6000社、日本に3000社、アジアにも数百以上存在するプロバイダーや企業利用者などの間の対策の進捗状況は必ずしも芳しくない。 4 グローバルに緊急行動が必要 これらの取組みを通して、関係者の間には、グローバルに協調した緊急行動が必要であるとの共通認識が生まれてきた。 大手事業者などは自己責任で対策を進めているが、それ以外の力の弱いところの対策の遅れがとくに懸念されている。彼らがY2K対策に遅れをきたせば、グローバルな相互接続ネットワークであるインターネットは、十分に機能しなくなるおそれがある。中小企業、開発途上国、地方など、相対的に力の弱いところほど問題が出る可能性が高い。必要な技術力や問題意識に欠けるところが多いとみられるからである。 たとえば、彼らが現在も多数使用していると思われる旧型製品には有償修理が必要なものが多いが、経済的にその余力がないところが多い。とくにアジアの経済危機に見舞われた諸国では、この問題は深刻である。また、機器に余裕がないため、テストも困難である。さらに、インターネットのY2K問題についての的確な技術情報、ノウハウが不足していることも問題である。そこで、APIAでは「アジアインターネットY2Kロードショー」(別紙)を実施し、アジア諸国のインターネット関係者にY2K対策推進を訴え、かつ支援を行うことを企画したものである。 5 日本のリーダーシップを 事態が明らかになるにつれて、日本に対してとくにアジア地域でのリーダーシップを発揮してほしいという要望が各国のインターネット関係者の間に高まっている。これまでもアジアのインターネットの発展には、日本から主としてボランティアによる指導・協力が行われてきたが、今回は各国とも経済危機の影響で余裕がなく、資金的、技術的に先進国への期待が高い。 インターネットに関しては、技術・製品の面で、米国企業の影響力が圧倒的に高いのは事実だが、Y2K問題に関しては、訴訟問題などへの配慮からかきわめて慎重な姿勢が目立ち、彼らがアジアにおいて積極対応を実施する可能性は残念ながらまだ低い。メーカーとしての個別対策はそれなりに進展しているが、業界が協調する形での取組みはほとんど実現されていない。 そこで日本政府がアジア諸国の側に立って、米国側に対して積極的にこの問題に取り組むことを要請しつつ、まず自らが率先する形で財政的、人的な支援を行えば、アジアにおけるインターネット市場の今後の成長に日本が貢献したという実績ができ、米国側も協力せざるをえず、結果としては今後の日本のアジア市場における情報分野を中心とする経済活動全体に対しても大きなプラス効果があがるものと期待できる。 アジア諸国では、民間事業者が自主的にY2K問題に取り組む傾向というは現実的には低く、政府による指導が必要かつ有効である。さらに、アジア諸国の政府がインターネットのY2K問題についてもつ認識はまだまだ低く、日本政府が公式にインターネット分野での取組みを要請し、かつ支援策を実施することは非常に効果的と考えられる。これらの状況に鑑み、このインターネットY2Kのアジア諸国巡回キャンペーンへの支援措置をぜひともお願いする次第である。
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